電気主任技術者・電験の試験の難易度や年収を紹介します。
三種・二種・一種の合格のためのコツも解説します。
電気主任技術者は電気系資格の中でもっとも難易度が高い試験です。
事業用電気工作物の保安業務には電気主任技術者が必要であり、取得しておくと年収も高くなります。
難関試験であるため、とても重宝される資格です。
この記事では下記などを紹介します。
- 電気主任技術者(電験)とは?
- 電験主任技術者の試験の難易度
- 勉強方法や勉強時間
- 一種・二種・三種の試験内容
- 電気主任技術者の年収や給料
あなたの資格取得の参考になればうれしいです。
それでは、さっそく見ていきましょう!
目次
電気主任技術者(電験)とは?
電気主任技術者とは、事業用電気工作物や自家用電気工作物の保安業務を行える国家資格です。
「電験」とも呼ばれています。
保安業務とは電気設備の維持・運用・工事計画などの業務です。
電気事業法43条1項では、事業用電気工作物には電気主任技術者を配置しなければならないと定められています。
事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、主務省令で定めるところにより、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならない。
引用元:電気事業法
勤務先は下記のような事業用電気工作物のある施設・建物に常駐します。
- 工場
- オフィスビル
- 大型ショッピングセンター
- ホテル
- 複合施設
- 鉄道会社
- 発電所
- マンション
発電所以外の事業用電気工作物は、受電した電気を施設に合った電圧に変換する変電設備のことです。
電気の取り扱いを間違えると事業が行えないどころか、火災事故などが発生する原因になります。
電気主任技術者の資格保持者がいないと、事業用電気工作物を取り扱うことができないのです。
事業者によっては電気主任技術者を自社雇用せず外注する会社もあるため、電気主任技術者の資格があると独立することもできます。
電気主任技術者(電験)には第一種・第二種・第三種がある
電気主任技術者(電験)には第一種・第二種・第三種があり、取扱可能な業務範囲が違います。
資格の種類 | 取扱可能な業務範囲 |
第一種電気主任技術者 | すべての事業用電気工作物 |
第二種電気主任技術者 | 電圧が17万V未満の事業用電気工作物 |
第三種電気主任技術者 | 電圧が5万V未満の事業用電気工作物(出力5000kW以上の発電所を除く) |
第一種電気主任技術者はすべての事業用電気工作物を取り扱うことができますが、第一種は難関試験です。
電気主任技術者(電験)の試験の難易度
電気主任技術者(電験)は電気系資格の中で最難関試験です。
難易度は「かなり高い」と言えます。
電気主任技術者の知識が乏しかったら、高電圧の事業用電気工作物で大事故が起きてしまいます。
高い安全性が必要な業務であるため、厳しい試験内容となっているのです。
電気主任技術者は資格を取得しないと業務ができない仕事のため、無資格者が普段の業務を通して勉強するのが難しい資格です。
そのため、不慣れな単語や計算が多く難易度が高い試験です。
計算問題が多いため、暗記系だけでは合格できません。
一般財団法人電気技術者試験センターでは、毎年30名超の試験作成員さんたちで試験問題が作られています。
過去問の使いまわしはほとんどないため、過去問を丸暗記しても合格できません。
基礎から学んで理解を深めないといけないのです。
第三種が一番難易度が低く、第一種が一番難易度が高いです。
試験の難易度を表す「合格率」を見てみましょう。
第三種電気主任技術者の合格率や難易度
第三種電気主任技術者のおおよその合格率は下記のとおりです。
- 全体の合格率:10%前後
- 科目合格率:30%前後
第三種電気主任技術者の試験レベルは、工業高校の電気科卒業くらいと言われています。
工業高校の電気科卒業くらいといっても、電気の勉強をしたことがない人にはかなり難しい試験です。
第三種といえども出題範囲は広いです。
他の資格と比較すると、電気主任技術者がいかに難しいかイメージがわきます。
- 司法書士:約4%
- 社会保険労務士:約6%
- 一級建築士:約10%
- 税理士:13~17%
- 弁護士:約25%
となっており、第三種電気主任技術者は一級建築士と同レベルです。
第三種電気主任技術者は税理士や弁護士よりも合格しにくい試験なのです。
かなり難易度が高い資格なのがわかりますよね。
ちなみに、電気工事士の合格率は下記のとおり。
- 第二種電気工事士の合格率:60%前後
- 第一種電気工事士の合格率:50%前後
ですので、電気工事士と比較すると第三種電気主任技術者はかなり難しい試験だといえます。
「科目合格」ですが、第三種電気主任技術者の試験科目は4科目があり、科目合格制です。
3年以内に4科目に合格すれば第三種電気主任技術者に合格できます。
※「科目合格者」は4科目中、1~3科目の合格者です。
「知識が偏っていると合格できない」とも言えますね。
合格基準は各科目で60点以上(60%以上)の正答が必要です。
第三種電気主任技術者の過去問
第三種電気主任技術者の過去問は、一般財団法人電気技術者試験センターのホームページに掲載されています。
「理論」の問題は、計算問題が多いのが特徴。
公式を使った応用問題もあります。
また、電気主任技術者の業務は受電側の設備が多いですが、発電側の知識に関する問題もでます。
電線の許容電流や電柱の架線の強度なども過去に出題されています。
第二種電気主任技術者の合格率や難易度
第二種電気主任技術者の近年の合格率をご紹介します。
第二種電気主任技術者は一次試験と二次試験があります。
一次試験は合格率が2~3割ほどあります。
第三種電気主任技術者で勉強したことも活かせるため、一次試験は合格率が高めです。
第三種電気主任技術者同様、一次試験は科目合格制です。
1科目合格の権利は合格から2年継続できます。
3年以内に4科目に合格できれば一次試験合格です。
一方、二次試験は一次試験よりも合格率は下がります。
合格率10~20%くらいです。
意外なのですが、第三種電気主任技術者の方が合格率が低いのです。
第二種電気主任技術者は電気系の専門学校を卒業するくらいの難易度と言われています。
※第三種電気主任技術者の試験を90点台で合格できれば、第二種電気主任技術者にチャレンジできるレベルです。
二次試験は一次試験合格者のみ受験できます。
二次試験には科目合格制度がありませんので、2科目を一発合格する必要があります。
また、二次試験では第三種電気主任技術者では出題されなかった、発電所や変電所の業務の問題も出題されます。
ちなみに、第二種電気主任技術者の過去問も、一般財団法人電気技術者試験センターのホームページに掲載されています。
第一種電気主任技術者の合格率や難易度
第一種電気主任技術者は一次試験と二次試験があります。
第一種電気主任技術者の一次試験は年によって合格率が上下しますが、おおよそ10~20%台の合格率です。
科目合格者の合格率も50%前後で高め。
※3年以内に4科目に合格すれば一次試験に合格して二次試験にいけます。
ただし、二次試験は年によっては合格率が10%を切るときもあります。
第一種電気主任技術者の二次試験は難関と言えるでしょう。
第一種電気主任技術者は大学の工学部電気科を卒業するくらいの難易度といわれています。
電気系資格の中で最難関試験です。
二次試験には科目合格制度がありませんので、2科目を一発合格する必要があります。
電気主任技術者(電験)の勉強時間・勉強方法
電気主任技術者に合格するまでの勉強時間は平均で約1000時間と言われています。
電気工事士の勉強時間は100~120時間と言われていますので、電気主任技術者がいかに難易度が高いかがわかりますね。
勉強時間のおおよその目安は下記のとおり。
- 電気を初めて勉強する人:約1500時間
- 微分積分の基礎がわかる人:約1000時間
- 球体の体積の式ができる人:約500時間
- 三次元の行列式計算やリッカチの微分方程式を理解している人:約300時間
それでは、勉強時間・勉強期間のシミュレーションを見てみましょう。
勉強に専念できる人の勉強時間・勉強期間
仕事をしておらず勉強に専念できる人の勉強時間・勉強期間のイメージです。
1日6時間勉強すると下記のとおり。
- 電気を初めて勉強する人:約1500時間÷6時間=250日(約8ヶ月)
- 微分積分の基礎がわかる人:約1000時間÷6時間=167日(約5ヶ月半)
- 球体の体積の式ができる人:約500時間÷6時間=83日(約3ヶ月)
- 三次元の行列式計算やリッカチの微分方程式を理解している人:約300時間÷6時間=50日(約1ヶ月半)
電気を初めて勉強する人は約8ヶ月かかりますので、逆算して早めに勉強を始めましょう。
仕事をしながら勉強する人の勉強時間と勉強期間
仕事をしながら勉強をする人の勉強時間と勉強期間のイメージです。
1日1時間勉強すると下記のとおり。
- 電気を初めて勉強する人:約1500時間÷1時間=1500日(約4年)
- 微分積分の基礎がわかる人:約1000時間÷1時間=1000日(約3年)
- 球体の体積の式ができる人:約500時間÷1時間=500日(約1年半)
- 三次元の行列式計算やリッカチの微分方程式を理解している人:約300時間÷1時間=300日(約1年)
仕事をしながら勉強する人は年単位で勉強計画を立てましょう。
電気主任技術者は難易度が高いため、粘り強く勉強していかないと合格できません。
電気主任技術者の勉強のコツ
電気主任技術者の勉強のコツは、下記の順序で勉強することです。
- 基礎的な参考書で勉強する
- 難易度の低い問題集から問題を解く
- 過去問を解く
電気主任技術者の一次試験の問題は5つの選択肢から1つを選択するマークシート方式です。
選択肢が多いため「運よく合格」ということは滅多にありません。
計算問題も多いため、公式など基礎を完璧にしておかないと問題を解けないようになっています。
よく「てっとり早く過去問から勉強を始める」という人がいますが、電気主任技術者ではおすすめしません。
また、計算問題が多いため丸暗記するタイプの勉強法でも点数が伸びません。
計算問題が多いため「計算問題を捨てて暗記問題で勝負」という方法は通用しません。
※ただし、法規は丸暗記です。
勉強の王道である、参考書→問題集→過去問の順番で勉強しましょう。
問題集や過去問は何度も解いてください。
一次試験は科目合格制科目合格性ですから「1年で1科目を勉強する」という人もいますが、4科目を3年で合格しなければいけないため、1年に1科目のペースでは合格できません。
電気主任技術者の年収
電気主任技術者の年収は約500万円と言われています。
電気主任技術者の資格は難易度が高く、事業用電気工作物には電気主任技術者を配置しなければならないことから、電気主任技術者は貴重な存在です。
資格をもっていれば就職・転職も有利になります。
ただし、電気主任技術者は資格だけ持っていて実務経験がない人もいます。
現実的には就職活動のときに実務経験を見られます。
どのような事業用電気工作物の実務経験があるかも見られるでしょう。
電気主任技術者を求めている下記のような企業が、どういった実務経験を求めているかを調べみるのがおすすめです。
- 発電所
- 工場
- マンション
- 大型商業施設
企業が求めている実務経験と合えば採用されやすいです。
自家用電気工作物ではない事業用電気工作物は、直接雇用の電気主任技術者を配置しなければいけません。
つまり、電気主任技術者の資格があって実務経験があれば正社員採用されやすいということです。
自家用電気工作物であれば電気主任技術者を外注できるため、個人事業主で独立して稼ぐ電気主任技術者もいます。
「スポットネットワーク方式」など、特別高圧でありながら電圧が低い大型施設もあります。
特に、首都圏では第三種電気主任技術者でも働ける大型施設も多く、第三種でもやりがいのある仕事ができるでしょう。
ただし、電気主任技術者は「事故を起こさない」ということが絶対使命です。
試験に合格することだけでなく、高い安全意識が必要な仕事です。
今後も電気がなくなることは考えにくいですから、電気主任技術者は将来性もある資格と言えるでしょう。
まとめ【電気主任技術者は難易度が高い。計画的に勉強しよう】
電気主任技術者はとても難易度の高い試験です。
計画的にコツコツと勉強を重ねていく必要があります。
1年以上の勉強時間が必要になる人が多いので、毎日少しずつでも勉強するクセをつけるようにしましょう。
電気主任技術者の人材不足や高齢化が進んでいるため、あなたが電気主任技術者の資格を取得するとあらゆる企業から求められる人材になれます。
長く稼げる資格でもあるため、取得することをおすすめします。
電気工事士よりも年収が高くなる傾向にあるため、キャリアアップのためにも有効な資格です。
あなたの資格取得の参考になればうれしいです!