上水道と下水道の違いを解説します。
なんとなく意味はわかると思いますが、正確な違いをご存知でしょうか?
また、上水道と下水道以外に「中水道」も存在します。
それぞれ詳しく解説するので、参考にしてみてください!
目次
上水道と下水道の違い【表で解説】
まず上水道と下水道の違いを表で解説します。
上水道 | 下水道 | |
意味 | 人が飲める水を供給する水道 | 家庭や工場から出た汚水を流す水道 |
管轄 | 厚生労働省 | 国土交通省 |
法律 | 水道法 | 下水道法と都道府県条例 |
圧力 | ポンプで圧力をかけて押し出す | 圧力はかけず勾配をつけて流す |
主に使われる管 | ダクタイル鋳鉄管ポリエチレン管
硬質塩化ビニル管 HIVP管 エルメックス管 ステンレス鋼管 |
硬質塩化ビニル管リブ付硬質塩化ビニル管
コンクリート管 強化プラスチック複合管 ダクタイル鋳鉄管 ステンレス鋼管 |
料金の決まり方 | 使用した上水道の量 | 下水道に流れた水の量 |
人間の血管に例えると、上水道は「動脈」、下水道は「静脈」というイメージです。
それでは、上水道と下水道をそれぞれ詳しく解説していきます。
上水道とは
上水道を簡単にいうと、人が飲める水を供給する水道のことです。
一般家庭だと下記が上水道に該当します。
- 水道水
- 風呂の水
- トイレの水
家庭に供給される水は、すべて上水道だと思っていいでしょう。
正確な呼び名は下記のとおりです。
- 人口5000人以上を対象:上水道
- 人口5000人未満:簡易水道
上水道の水源と飲料水になるまでの流れ・仕組み
上水道の水源は下記の種類があります。
- 地表水:湖、川、ダムの水など
- 伏流水:浅い地中を流れる水
- 地下水:深い地中を流れる水
こうした水源から水を集め、下記の工程で飲料水にしていきます。
- 取水設備:湖、川、ダムから水を取り入れる
- 沈砂池:砂や土を沈める
- 導水ポンプ:浄水場に水を運ぶ
- 薬品混和池:濁りを固める薬品を入れる
- フロック形成池:水をかきまぜて濁りを固める
- 沈でん池:固まった濁りを沈める
- ろ過池:さらに細かいゴミをろ過
- オゾン接触池や活性炭吸着池:臭いを分解・吸着
- 塩素を注入
- 配水池:きれいになった水を溜めておく
- 送水ポンプ:給水場に水を運ぶ
- 給水場:圧力を使って水を送る
上水道の管
代表的な上水道管は下記などがあります。
- ダクタイル鋳鉄管:強度があり衝撃や耐久性に優れる
- ポリエチレン管:取り付けや撤去が簡単(宅内の給水管に使われやすい)
- 硬質塩化ビニル管:抵抗が少なく腐食に強い(宅内の給水管に使われやすい)
- HIVP管:プラスチック樹脂でできている
- エルメックス管:耐熱と耐寒に優れる
- ステンレス鋼管:錆びにくい
上水道の水圧
上水を各戸に運ぶには、ポンプの圧力を使って水を押し出さなければいけません。
水道法の規定に基づく水道施設の技術的基準を定める省令では、配水管から給水管に分岐する箇所の圧力は0.15Mpa~0.74Mpaと定められています。
水の温度や管径にもよりますが、0.1Mpaで水を10mくらい上げられるイメージ。
一般的な上水道の水圧は0.2~0.4Mpaくらいです。
高層ビルなどで水圧が足りないときは、増圧ポンプを設置することもあります。
ポンプについては、給水方式の比較やメリットとデメリットも参考にどうぞ。
また、マンションやビルでは、水道局から送られてきた水道水を一時ためておく「受水槽」が設置されていることもあります。
受水槽の詳細は、受水槽の仕組みや構造!容量や設置基準もご紹介で詳しく解説しています。
上水道の管轄や省令
上水道は厚生労働省が管轄しています。
飲料水であるため、上水道の水質は水道法の「水質基準項目と基準値(51項目)」で明確に定められています。
出典:厚生労働省「水道水質基準について」
上水道の料金
上水道の料金は「使用した上水道の量」で決まります。
また、新規で上水道を使う場合は「水道加入金」が必要です。
ちなみに、上水道の料金を払わなかった場合の消滅時効期間は2年です。
※料金を支払わないと行政処分などが行われることもあります。
下水道とは【意味を簡単に解説】
下水道とは、家庭や工場から出た汚水を流す水道のことです。
例えば、下記のような汚水を流します。
- 洗濯の排水
- 風呂の排水
- し尿などを含む水洗トイレの排水
- 洗剤・タンパク質汚れを含むキッチンの排水
- 工場やビルなどの産業排水
各戸から集められた汚水は、下水処理場(終末処理場)で汚物を沈でん・ろ過して、消毒後に自然に放流されます。
下水道の管
下水道の管は下記などが使われています。
- 硬質塩化ビニル管:抵抗が少なく腐食に強い
- リブ付硬質塩化ビニル管:塩化ビニル管の外周に環状のリブ構造が付いている
- コンクリート管:管径が大きい場合に使われることがある
- 強化プラスチック複合管:管径が大きい場合に使われることがある
- ダクタイル鋳鉄管:強度があり衝撃や耐久性に優れる
- ステンレス鋼管:錆びにくい
下水道管にはあまり圧力をかけない
下水道管は傾斜をつけて汚水を流すため、上水道のようにポンプを使って圧力をかけません。
勾配は下水道を使う人口によって変わります。
排水人口 | 管径 | 勾配 |
150人未満 | 100mm以上 | 2/100以上 |
150人以上 300人未満 | 125mm以上 | 1.7/100以上 |
300人以上 500人未満 | 150mm以上 | 1.5/100以上 |
500人以上 | 200mm以上 | 1.2/100以上 |
詳しくは、排水管の勾配の付け方や基準【工事の4つの注意点も解説します】で解説しています。
下水道の管轄や省令
下水道は国土交通省が管轄しています。
下水道法と、都道府県条例によって水質基準が設けられています。
ちなみに、下水処理場(終末処理場)を処理した水を放流するときの水質基準は、環境省の一般排水基準を参考にどうぞ。
下水道の料金
下水道の料金は「下水道に流れた水の量」で決まります。
自治体によって料金が違うので、例として東京23区・大阪市・名古屋市の1ヶ月ごとの下水道料金を掲載しておきます。
使用量 | 東京23区の下水道料金 |
0~8㎥ | 一律560円 |
9~20㎥ | 1㎥ごとに110円 |
21~30㎥ | 1㎥ごとに140円 |
31~50㎥ | 1㎥ごとに170円 |
51~100㎥ | 1㎥ごとに200円 |
101~200㎥ | 1㎥ごとに230円 |
201~500㎥ | 1㎥ごとに270円 |
501~1000㎥ | 1㎥ごとに310円 |
1001㎥以上 | 1㎥ごとに345円 |
参考:東京都水道局「水道料金・下水道料金の計算方法(23区)」
使用量 | 大阪市の下水道料金 |
0~10㎥ | 一律605円 |
11~20㎥ | 1㎥ごとに約67円 |
21~30㎥ | 1㎥ごとに約91円 |
31~50㎥ | 1㎥ごとに約113円 |
51~100㎥ | 1㎥ごとに約131円 |
参考:大阪市「水道料金・下水道使用料早見表と計算式」
使用量 | 名古屋市の下水道料金 |
0~20㎥ | 一律1232円 |
21~40㎥ | 1㎥ごとに約119円 |
41~60㎥ | 1㎥ごとに約172円 |
61~70㎥ | 1㎥ごとに約197円 |
参考:名古屋市上下水道局「上下水道料金早見表(一般家庭用・口径13ミリ)」
また、下水道に新規で加入する場合は「受益者負担金」がかかります。
そして、下水道の料金を払わなかった場合の消滅時効期間は5年です。
※上水道と同様、料金を支払わないと行政処分などが行われることもあります。
下水道がない地域の処理設備【浄化槽】
日本の下水道の普及率は約80%です。
一部の地域では、まだ下水道が整備されていません。
下水道がきていない場合は、浄化槽が使われます。
浄化槽とは、公共の下水道に汚水を流さず、建物ごとに汚水を浄化する設備のことです。
下水道料金はかかりませんが、維持費はかかります。
浄化槽の詳細は、浄化槽と下水道の違いを比較【メリットとデメリットや資格も解説】にまとめています。
中水道とは
ちなみに上水・下水以外に「中水」もあります。
中水とは、飲用はできないけど、人体に悪影響がない水のことです。
わかりやすくいうと「飲めないけど、そこまで汚れてない水」だと思ってください。
中水道は下記のような設備で使えわれています。
- 噴水
- 工業用水
- 水洗トイレなど
中水のメリット
中水を使うメリットは下記のとおり。
- 水を再利用できる
- コストカットできる
- 非常時に使える
日本は水が豊富な国ではありますが、限りある資源です。
水をムダづかいしないためにも、中水の利用が重視されています。
都市部では、中水道の設備が義務付けられているところもあるくらいです。
中水の原水
中水の原水は下記などがあります。
- 雑排水:工業用水など
- 雨水:水洗トイレに使用されることがある
- 厨房排水:厨房排水除害施設で水をきれいにしてから使う
また、中水利用システムには下記のようなものがあります。
- 個別循環型中水利用システム:建物で排水処理施設を整備し水を循環利用する
- 地区循環型中水利用システム:複数の建物で排水処理施設を整備し循環利用する
- 広域循環型中水利用システム:下水処理施設から雑用水利用者に供給
参考:中水利用システム
まとめ【上水道・下水道・中水道の違いを理解しよう】
上水道・下水道・中水道の違いを解説してきました。
仕組みなどがイメージできたかなと思います。
あなたの参考になればうれしいです!