受水槽の仕組みや構造、容量や設置基準などをご紹介します。
受水槽とは、水道局からマンションやビルなどに送られた水道水を一時ためておくタンクです。
給水設備の知識を深めるためにも、受水槽のことを勉強しておきましょう。
この記事では下記を解説します。
- 受水槽の仕組みや構造
- 受水槽の容量
- 受水槽の設置基準
- 3つの給水方式
- 受水槽の清掃・点検・水質検査
- 受水槽と貯水槽の違い
- 定水位弁の仕組み
あなたの給水設備の勉強の参考になればうれしいです!
目次
そもそも受水槽とは?
マンション・ビル・病院・学校・工場など大型の建物は、水道局の配水管から流れてくる水を直接水道の蛇口から出すのではなく、一度受水槽にためてから各水道に送ります。
受水槽にするメリットは下記のとおり。
- 一度に大量の水を使っても水圧が低下しない
- 一度に大量の水を使っても水道局の配水管の水圧低下に影響しない
- 災害で断水したときも受水槽に残っている水を給水することができる
- 工場などで汚染された水が配水管に逆流するのを防げる
受水槽方式と反対にあるのは、配水管から直接水を引き込む「水道直結方式」などがあります。
水道直結方式は上記①~④の受水槽方式のメリットがありません。
受水槽の構造
受水槽には11の決まりが法律で定められているので覚えておきましょう。
- 受水槽の天井・底・壁は、建物の躯体など建物の一部として使うことができない(点検ができないから)
- 断水せずに清掃ができるように受水槽は2基以上設置するか、受水槽の中に仕切りを設けなければいけない
- 受水槽の天井には1%以上の勾配をつけること
- 受水槽の底には1%以上の勾配をつけて、排水溝と吸込みピットを設けること
- 受水槽のマンホールは防水パッキンと鍵をつけて、直径60cm以上・周りから10cm以上上げて設置する
- 容量が2㎥以上の受水槽は防虫網をつけた通気口を設置し、通気口の開口部は受水槽上面から10cm以上のところにする
- 受水槽内で滞留する水がないよう、給水管と給水ポンプの配置は対角にする
- オーバーフロー管は間接排水にして開口端に防虫網をつける
- 受水槽は飲料水なので飲料水用の給水管以外の配管を設けない
- 受水槽の天井の上部に飲料水用の給水管以外の配管を設けない
- 受水槽の上部にポンプなどを設置する場合は飲料水を汚染しないようにする
例えば、地下に埋まっているコンクリートの受水槽や、建物の躯体として利用される受水槽は6面から点検ができないため、地上に置くタイプの受水槽に変える必要があります。
受水槽の容量
受水槽は、水道局の配水管からの給水量と、建物内の水道使用量によって容量を知っておかなければいけません。
容量がわからないと下記のリスクがあります。
- 水が足りなくなる
- 受水槽内の水が多すぎてあふれる
受水槽への給水量は1日の計画使用水量を計算して決定します。
飲料水の場合の使用量は、受水槽の容量の40%~60%にする必要あり。
計画使用水量の計算方法は、下記などがあります。
- 過去の使用実績から計算する
- 建物内で1人が1日に使用する水量×使用人数
- 床面積あたりで使用する水量×延べ床面積
建物の種類による使用水量の目安は、社団法人空気調和・衛生工学会「空気調和衛生工学便覧第 14 版」に目安が記されています。
建物の種類 | 1日当たりの単位給水量 |
戸建住宅 | 200~400㍑/人 |
集合住宅 | 200~350㍑/人 |
事務所 | 60~100㍑/人 |
工場 | 60~100㍑/人 |
総合病院 | 1500~3600㍑/床・30~60㍑/㎡ |
ホテル(全体) | 500~6000㍑/床 |
デパート・スーパー | 15~30㍑/㎡ |
学校 | 70~100㍑/人・2~4㍑/㎡ |
駅 | 3㍑/1000人 |
引用元:社団法人空気調和・衛生工学会「空気調和衛生工学便覧第 14 版」
受水槽の設置基準
受水槽の設置基準は建築基準法に定められています。
受水槽を6方向から目視点検(6面点検)できるように、受水槽の天井・底・側面と、建物の天井・床・壁との間に60cm以上のすき間を設ける必要があります。
点検ができないと水が汚染されてしまい、建物の水を使用する人の人体に悪影響があります。
受水槽の3つの給水方式
5階以上のビルやマンションなどは、水道直結方式だと上層階まで水を送ることができません。
5階以上の建物は受水槽方式が向いています。
受水槽方式には3つの給水方式があるのでご紹介します。
①高置水槽式
配水管からの水を一度受水槽にためて、ポンプ(揚水ポンプ)で建物屋上部分の高置水槽に上げます。
あとは屋上の高置水槽から重力で各水道に給水する方法です。
重力で給水するため水圧は安定します。
ただし、10階から1階までが適切な水圧なので、高層ビルやタワーマンションなどは10階おきに高置水槽を設置するなど工夫が必要です。
②圧力水槽式
配水管からの水を受水槽にためてから圧力水槽に送り、給水する方法です。
圧力水槽の圧力で給水しますが、給水できる高さは高置水槽式の方が高く、中層階の建物に向きます。
③ポンプ直送方式
配水管からの水を受水槽にためてから、建物内の水の使用量に応じてポンプを稼働させる給水方式です。
圧力水槽式と同じく中層階の建物に向きます。
他の給水方式
そもそも、給水方式には下記があります。
- 水道直結方式(戸建住宅向け)
- 増圧給水方式(中層階向け)
- 受水槽方式(高層階向け)
給水方式を広く勉強するためにも知っておきましょう。
ちなみに給水方式については、給水方式の比較やメリットとデメリットを参考にどうぞ。
受水槽の清掃・点検・水質検査
受水槽は定期的な清掃・点検・水質検査が必要です。
特に、飲用水の場合は清掃・点検・水質検査をしないと雑菌が繁殖した水が水道から出てくることになります。
汚染された水を飲んでしまうと健康被害がでるため、きちんと清掃・点検をしなければいけません。
健康被害が出た場合の責任は、建物の管理者にあります。
汚染された水の特徴は下記のとおり。
- 鉄・銅・鉛などで金属臭い
- 赤水がでる
- かび臭い
- 藻の発生
- 虫の混入
受水槽の清掃と水質検査・残留塩素検査は年1回以上と水道法で定められています。
清掃の際に設備の点検もしてしまいましょう。
受水槽は清掃・点検コストが高いですが、災害時に水の確保をできるなど万が一の際にも有効なので、きちんと清掃・点検しましょう。
清掃・点検を怠って、災害時に汚染された水が受水槽から出てきたら意味がありません。
受水槽の清掃・点検は建物の入居者に事前に通知しておく必要があります。
受水槽によっては水道が使えなくなることもあります。
受水槽の管理は建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)が行う
建築物衛生法により、床面積3000㎡以上の建築物には建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)を選任しなければいけないと定められています。
建築物環境衛生管理技術者の仕事内容の中には下記の監督業務があり、受水槽の管理・監督も含まれます。
- 水質の定期検査
- 貯水槽の管理
- 排水・下水の管理
- 清掃
- ねずみや害虫の防除
- 電気設備の定期点検
受水槽など建物の衛生管理の仕事をしたい場合は建築物環境衛生管理技術者の資格が有効です。
建築物環境衛生管理技術者については、建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)の合格率や難易度を参考にどうぞ。
受水槽と貯水槽の違い
受水槽の説明をしてきましたが「受水槽と貯水槽ってどう違うの?」と思う人も多いはず。
前述の通り、受水槽は「水道水をためておくタンク」ですが、貯水槽は「水道水以外の水も含めて水をためておく設備」の総称です。
「水道水以外」とは、工業用水や防災用水なども含まれます。
貯水槽に該当するのは下記などです。
- 受水槽
- 高置水槽
- 貯湯槽
- ポンプ
定水位弁の仕組み
貯水槽には「定水位弁」が設置されていて、貯水槽内の水量を保ってくれています。
定水位弁には主弁と副弁があります。
副弁は貯水槽内に設置されて、水面が副弁に設置すると水位が上がっていることになり、貯水槽外部に設置された主弁からの給水がストップされます。
反対に、副弁が水に触れていない状態(水位が下がった状態)になると、主弁が開いて給水される仕組みです。
副弁にはボールタップや電極が使われています。
定水位弁は定期点検をしないと主弁の開閉がうまくいかず、水があふれることもあるので注意しましょう。
まとめ
ビルやマンションなど、一度に大量の水を使う可能性のある建物では、受水槽に水をためておく必要があります。
構造・容量・設置基準をきちんと守らないと点検ができなかったり、水があふれるリスクがあります。
点検や清掃ができないと水が汚染されて、特に飲用水の場合は人体に悪影響がでます。
受水槽の給水方式には、下記の3つがあるので覚えておきましょう。
- 高置水槽式
- 圧力水槽式
- ポンプ直送方式
あなたの給水設備の勉強になればうれしいです!