ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略です。
太陽光発電などで自宅でエネルギーを創ることで、1年間に自宅で消費するエネルギーが正味ゼロ以下となる住宅のことです。
国は2030年までに新築住宅をZEHにしたいと考えており、ZEHビルダーも増加しており、ZEH住宅を建てる人も増えています。
今後建築業界でもZEH関連の工事は増えていくでしょう。
この記事では、
- そもそもZEHとは?
- ZEHの申請基準や条件
- ZEHのデメリット
- ZEHの補助金
などをご紹介します。
目次
そもそもZEHとは?
経済産業省ではZEHの定義を以下のようにしています。
外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅
引用元:経済産業省 資源エネルギー庁「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について」
すごく簡単にいうと、太陽光発電などで自宅でエネルギーを創ることで、1年間に自宅で消費するエネルギーが正味ゼロ以下となる住宅のことです。
近年の省エネの流れで一般住宅にも省エネの技術が使われるようになりました。
地球温暖化対策としてもZEHの導入が進められています。
また、災害発生時に社会インフラが停止しても、自家用エネルギーを作り出せるようにする目的もあります。
もちろん、ZEH住宅に住んでいる人は、電気料金やガス料金を安くすることができます。
2014年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」では、ZEHの実現・普及⽬標が設定されています。
- 2020年までに、標準的な新築住宅でZEHを実現
- 2030年までに、新築住宅の平均でZEHを実現
となっており、今後建てられる新築住宅はZEH化が進みます。
2020年、2030年までに目標を達成するために、ZEHの普及⽅策を検討する⽬的のZEHロードマップ検討委員会が設置され、現在も新しいZEHロードマップが制作されています。
参考:エネルギー基本計画(2014 年 4 月 11 日 閣議決定)
ZEHの申請基準や条件
ZEHの申請基準・条件は、大きく分けると、
- 断熱性能・気密性能の基準値をクリアする
- ソーラーパネル(太陽光発電システム)を設置する
の2つがあります。
経済産業省のZEHロードマップ検討委員会では、下記のようにZEHの判断基準を定めています。
①強化外皮基準(1~8地域の平成 25 年省エネルギー基準(ηA値、気密・防露性能の確保等の留意事項)を満たした上で、UA値 1、2地域:0.4[W/㎡K]相当以下、3地域:0.5[W/㎡K]相当以下、4~7地域:0.6[W/㎡K]相当以下)
②再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から 20%以上の一次エネルギー消費量削減
③再生可能エネルギーを導入(容量不問)
④再生可能エネルギーを加えて、基準一次エネルギー消費量から 100%以上の一次エネルギー消費量削減
引用元:経済産業省「ZEHロードマップ検討委員会とりまとめ」
ちょっとわかりにくいので簡単に説明すると、
- ①断熱性能・気密性能について
- ②省エネについて
- ③④エネルギーを作ることについて
が書かれています。
ZEHの断熱性能・気密性能の条件
①断熱性能・気密性能がZEHとして認められるのは、
- SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)が定める省エネ基準を満たしていること
- SII認定のZEHビルダー登録会社で新築住宅を建築をすること
の2つの条件をクリアした住宅です。
SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)はZEH建築会社の認定や、ZEHの補助金なども管轄しています。
UA値とは強化外皮基準のことです。
強化外皮基準とは、1㎡からどのくらい熱量が逃げているかのことです。
UA値が0.4、0.5、0.6と違うのは、地域によって基準が違うからです。
※東京や大阪など首都圏は0.6、北海道は0.4以下など。
断熱性能・気密性能を高めるには高性能の躯体で住宅を建てることが重要です。
高性能な柱、梁、床、窓、断熱材などで建築することでZEH基準を満たしましょう。
ソーラーパネル(太陽光発電システム)設置の条件
ZEH認定されるソーラーパネルの条件は、
- 最大出力の合計が10kW未満か、パワーコンディショナーの定格出力が合計で10kW未満
- 売電を行う場合は余剰買取方式であること
の2つです。
事業用のソーラーパネルは発電した電気をすべて売ることができますが、一般住宅はあくまでも「余った電気」しか売れません。
余った電気を売ることで生活費の一部にしたり、住宅ローンの負担を減らせるのはうれしいですね(^^)
ZEHは省エネ基準より20%以上の省エネが必要
断熱性能・機密性能を高め、ソーラーパネルを設置して、さらに省エネ基準より20%以上の省エネを実現しないとZEH基準を満たしません。
ちなみに、省エネ基準より20%以上の省エネの対象は、
- 照明設備
- 空調設備
- 給湯設備
- 換気設備
の4つです。
すべての設備の合計で20%以上の省エネを目指すというわけではありません。
Nearly ZEHとは?
ZEHロードマップ検討委員会では、ZEH基準に満たないがZEH基準に近いNearly ZEH(ニアリー・ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)も定義づけています。
①強化外皮基準(1~8地域の平成 25 年省エネルギー基準(ηA値、気密・防露性能の確保等の留意事項)を満たした上で、UA値 1、2地域:0.4[W/㎡K]相当以下、3地域:0.5[W/㎡K]相当以下、4~7地域:0.6[W/㎡K]相当以下)
②再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から 20%以上の一次エネルギー消費量削減
③再生可能エネルギーを導入(容量不問)
④再生可能エネルギーを加えて、基準一次エネルギー消費量から 75%以上 100%未満の一次エネルギー消費量削減
引用元:経済産業省「ZEHロードマップ検討委員会とりまとめ」
日当たりが悪い地域や、屋根が小さくてソーラーパネルが制限されるなど「ZEHにしたいけどできない」というケースのための定義づけです。
ZEHのデメリット
ZEHが推奨されていますがデメリットもあります。
ZEHにすることを意識しすぎると、肝心の「住みたい家」の設計が二の次になることがあります。
例えば、
- ドアや窓の大きさや形が制限される
- 計測機器のスペースが必要
などです。
ZEHは高断熱・高気密住宅なので、大きい窓だと断熱性・気密性が下がります。
ペアガラスにすることでZEH基準をクリアすることができますが、建築費用は高くなります。
「大きい窓がほしい!」という人は注意しましょう。
また、エネルギー計測器やZEH用の給湯器や配電盤など、ZEH住宅には基準を満たすための機器が多くなります。
機器を置くスペースが必要ということは、それだけ家が狭くなる、他の物を設置できないことを意味しています。
ZEHにかかわる機器には何があり、どこにどれくらいスペースをとるのかを把握して設計する必要があります。
ZEHの補助金
ZEH基準を満たすと補助金がもらえる可能性があります。
年度によって募集枠があり、必ず補助金がもらえるわけではありませんが、1軒あたりの補助金は全国一律で75万円です。
新築住宅を建てる上で75万円は大きいので、チャンスがあれば補助金を申請してみましょう。
また、ZEH住宅を建築・販売する業者も補助金のことは知っておきましょう。
「ZEHの補助金を申請できたのに、業者がアドバイスをくれなかった!」となるとクレームになります。
まとめ
2030年に向けて今後はもっとZEH住宅が一般的になっていくでしょう。
新築住宅を購入する人も、建築・販売する業者側もZEH申請の基準や条件を知っておきましょう。
毎年の補助金の動向にも注目してください。
今後もZEHロードマップ検討委員会から情報が発表されることもあると思うので、最新の情報をチェックするようにしましょう。
ZEHの参考になれば幸いです。