どれくらいの高さから、エレベーターを設置しないといけないんだろう?
あと、設置の届出はどこにするの?
こういった疑問に答える記事です。
この記事の内容は下記のとおり。
- エレベーターの設置義務は法律や条例に従う
- エレベーターの設置届は所轄の行政庁に出す【検査もあります】
一定以上の高さの建築物には、エレベーターの設置義務があります。
エレベーターはスペースが必要なため、事前に設置義務を確認しておきましょう。
また、設置届をどこに出すかも解説します。
あなたの設計の参考になればうれしいです!
目次
エレベーターの設置義務は法律や条例に従う
エレベーターには、設置義務があります。
大きく分けると、下記の3つで定められています。
- 建築基準法
- 高齢者の居住の安定確保に関する法律
- 各地方自治体の条例
くれぐれも、3つすべてを守ってください。
1つずつ解説していきますね。
①建築基準法のエレベーターの設置義務
建築基準法第34条では、高さ31m超の建築物に非常用の昇降機(エレベーター)を設置することが義務付けられています。
(昇降機)
第三十四条
建築物に設ける昇降機は、安全な構造で、かつ、その昇降路の周壁及び開口部は、防火上支障がない構造でなければならない。
2 高さ三十一メートルをこえる建築物(政令で定めるものを除く。)には、非常用の昇降機を設けなければならない。
例えば、マンションなら1フロアの高さはだいたい3mなので、31mだと10階建のマンションということです。
ちなみに、高さ31m超の建築物には、通常のエレベーターとは別に、非常用のエレベーターの設置が必要です。
非常用エレベーターは、普段は荷物の上げ下ろしや人の移動に使いますが、緊急時は消防隊員が使用します。
条件を満たせば、非常用エレベーターの設置が免除される
通常のエレベーターと別に非常用エレベーターを設置すると、スペースをとらないといけません。
当然、費用も高くなります。
でも、条件を満たせば非常用エレベーターの設置が免除されます。
主な条件は下記のとおり。
- 高さ31m以上の部分の各階の床面積が500㎡以下
- 高さ31m以上の部分が4階以下で、100㎡ごとに防火区画がある
- 高さ31m以上の部分が装飾塔、物見塔、屋窓、機械室の場合
免除の条件については、非常用エレベーターの設置基準【乗降ロビーの設置基準も解説】に詳しくまとめました。
非常用エレベーターの乗降ロビーの設置基準も解説しているので、設計の参考になると思います。
②高齢者の居住の安定確保に関する法律
「高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則」にも、エレベーターの設置義務があります。
3階建て以上のサービス付き高齢者向け住宅には、原則、エレベーターを設置しなければいけません。
(加齢対応構造等である構造及び設備の基準)
第三十四条
法第五十四条第一号 ロの国土交通省令で定める基準は、次に掲げるものとする。
八 階数が三以上である共同住宅の用途に供する建築物には、原則として当該建築物の出入口のある階に停止するエレベーターを設置すること。
高齢者がフロアをスムーズに移動するためにも、エレベーターが必須です。
【ちなみに】バリアフリー設計の記事を紹介
サービス付き高齢者向け住宅は、当然バリアフリー設計が必要です。
下記の2記事は、バリアフリー設計に役立つと思うので参考にどうぞ。
③各地方自治体の条例
各地方自治体によっても、エレベーターの設置義務が定められています。
例えば「◯階以上なら、エレベーターの設置が必要」みたいな感じです。
一般的には「6階建て以上の建物はエレベーターが必要」となっている地方自治体が多いですね。
また、「3~5階の建物でも、できるだけエレベーターを設置する」としている自治体も多いです。
条例は都道府県だけでなく、市区町村にもあります。
各地方自治体の条例を確認しましょう。
【おまけ】住宅設計指針
ちなみに住宅設計指針では、「6階以上の建物はエレベーターを設置する」とされていますが、義務ではありません。
前述の建築基準法の「高さ31m超」は義務なので、31m超かどうかが重要です。
エレベーターの設置届は所轄の行政庁に出す【検査もあります】
エレベーターの設置届は、所轄の行政庁に提出しましょう。
わからない場合は、各行政庁に問い合わせして聞いてみてください。
ちなみに、エレベーター設置後は各種検査があります。
- 建築基準法の定期検査
- 労働安全衛生法の自主検査・性能検査
正しい手続きを踏んで、エレベーターを設置しましょう。
まとめ【エレベーターの設置義務は法律や条例によって違う】
この記事をまとめます。
- 建築基準法では、31m超の建築物には非常用エレベーターの設置義務がある
- 高さ31m超の建築物であっても、条件を満たせば非常用エレベーターの設置が免除される
- 高齢者の居住の安定確保に関する法律では、3階建て以上のサービス付き高齢者向け住宅にエレベーターの設置義務がある
- 各地方自治体によって、エレベーターの設置義務が定められている
- エレベーターの設置届は、所轄の行政庁に提出する
エレベーター設計の参考にしてください。
ちなみに、エレベーターに関する資格として「昇降機検査資格者」があります。
検査・点検の資格ですが、知識を深めるためにも勉強しておくと良いでしょう。
詳しくは、昇降機検査資格者の合格率からみる難易度【4日間の講習が命です】にまとめています。
あなたの仕事の参考になればうれしいです!