「浄化槽と下水道の違いって何?」
「それぞれのメリットとデメリットは?」
「浄化槽と下水道の資格ってあるの?」
こういった疑問に答える記事です。
この記事でわかることは下記のとおり。
- 浄化槽と下水道の違いや比較がわかる
- 浄化槽と下水道のメリットとデメリットがわかる
- 浄化槽と下水道に関する資格がわかる
この記事では浄化槽と下水道の違いを解説します。
それぞれの資格も紹介するので、参考にしてみてください。
目次
浄化槽と下水道の違いを比較
浄化槽と下水道の比較表を見てみましょう。
浄化槽 | 下水道 | |
特徴 | 汚水を浄化して側溝や河川に排水する下水道に汚水を流さない | 下水管を使って各建物から汚水を下水処理場に集め、浄化して川や海に流す |
できること | 汚水処理 | 汚水処理、汚泥処理、浸水防止 |
対象の建物 | 一般家屋がメイン | 一般家屋、ビル、工場、病院、学校など |
設置される場所 | 一般家屋の敷地内 | 下水道管:道路の下に埋没させる下水処理場:条件が適した場所(広い敷地が必要) |
設備の管理者 | 個人 | 都道府県や市町村 |
それでは、浄化槽と下水道をそれぞれ解説します。
浄化槽とは
浄化槽とは、公共の下水道に汚水を流さず、建物ごとに汚水を浄化する設備のことです。
具体的には、微生物の働きによって水を浄化します。
下水道が整備されていない地域に設置されることが多いです。
臭いがでないように、地中に埋めて設置されます。
現在は合併浄化槽が使われている
そもそも、排水は下記の3種類があります。
- トイレの排水:汚水
- キッチン、洗面、風呂の排水:雑排水
- 雨樋からの排水:雨水
現在は汚水と雑排水を処理する「合併浄化槽」が使われています。
※以前は汚水のみを扱う「単独浄化槽(いわゆるボットン便所)」が主流でしたが、現在は新設できなくなっています。
合併浄化槽には、下記の2つの方式があります。
- 分流方式:汚水のみを浄化槽で処理。雑排水と雨水は側溝や河川に流す
- 合流方式:汚水・雑排水を浄化槽で処理。雨水は側溝や河川に流す
また、合併浄化槽できれいになった水は、下記のいずれかで処理されます。
- 道路の側溝に流す
- 蒸発させる(蒸発拡散方式)
- 地中に染み込ませる(地下浸透方式)
- バキュームカーに回収してもらう(貯水方式)
処理方法は、各自治体によって決められています。
下水道とは
下水道とは、下水処理場(終末処理場)で水をきれいにしてから川や海に流す方式です。
地中に埋まった下水道管を使って下水を流すため、悪臭を防ぐことができます。
下水道には、下記の2つの方式があります。
- 分流方式:汚水・雑排水と雨水の配管を別にして排水処理する方法
- 合流方式:汚水・雑排水・雨水の配管を一緒にして排水処理する方法
※合流方式は、大雨の際に処理能力を超えてしまうことがあります。
浄化槽と下水道のメリットとデメリット
次に、浄化槽と下水道のメリットとデメリットを紹介します。
理解した上で、どちらを採用するか検討しましょう。
浄化槽のメリット
- 下水道料金・受益者負担金がかからない
- 下水道管が遠い場合は工事費用が安く済む
- 水を多く使う家庭は下水道を使うより安く済むことがある
そもそも下水道を使わないため、下水道料金がかからないことはもちろん、下水道の新設時に必要な受益者負担金を払う必要もありません。
下水道料金は使用した水の量と比例しますが、浄化槽ならたくさん水を使っても下水道料金が上がることもないです。
また、建物から下水道管が離れている場合、下水道工事をすると費用がたくさんかかってしまいます。
この場合は浄化槽を選ぶことで、工事費を節約できます。
浄化槽のデメリット
- 維持費がかかる
- ブロアーから音が出ることがある
- 浄化槽やブロアーに寿命があり交換が必要
- 油、洗剤、漂白剤、アルコールなどを流すと微生物の働きが弱くなり悪臭を放つことがある
浄化槽には下記の維持費がかかります。
- 清掃費:年1回以上
- 点検費:年3回以上
- ブロアーの電気代
清掃と点検は法令で定められているため、必ず実施しなければいけません。
もちろん専門の業者に頼む必要があるため、お金がかかります。
また、浄化槽に空気を送るブロアーは24時間稼働しなければいけないため、その電気代も必要です。
地域や業者にもよりますが、年間の維持費の相場は3~8万円くらい。
また、浄化槽とブロアーの寿命は下記のとおりです。
- 浄化槽:20~30年
- ブロアー:5~10年
当然ですが、浄化槽やブロアーを更新するときも費用が発生します。
ちなみに、浄化槽の設置費用は下記のイメージです。
- 設置工事:5人用の浄化槽で50~90万円くらい
- 排水管工事:一般的な戸建で60~100万円くらい
※地域や業者によって変わります。
下水道のメリット
- 建物の所有者による清掃・点検が不要
- 浄化槽やブロアーの交換が不要
- ブロアーがないので静か
下水道は行政が管理しているため、建物の所有者が業者に頼んで清掃・点検をする必要がありません。
当然、浄化槽やブロアーの更新もないため、大きな出費がないのがメリットです。
下水道のデメリット
- 下水道料金や受益者負担金がかかる
- 水を使うほど下水道料金が上がる
前述のとおり、下水道料金は使った水の量に比例して上がっていきます。
浄化槽から下水道に切り替えるには
浄化槽から下水道に切り替えるには、都道府県や市町村ごとの排水処理方式に従う必要があります。
場合によっては、下水道に切り替えられないこともあるでしょう。
切り替え工事の費用は、下水道管までの距離によって変わります。
※目安:30~100万円くらい
また、浄化槽を撤去する工事も必要です。
浄化槽と下水道に関する資格5選
浄化槽や下水道に関わる仕事をする人向けに、代表的な資格を5つ紹介しておきます。
- 浄化槽設備士
- 浄化槽管理士
- 浄化槽技術管理者
- 管工事施工管理技士
- 排水設備工事責任技術者
1つずつ解説しますね。
①浄化槽設備士
浄化槽設備の設置工事の監督・指導を行う国家資格です。
「浄化槽の設置工事には浄化槽設備士を配置しなければいけない」と定められているため、とても需要があります。
また、浄化槽工事業者は浄化槽設備士を置く義務があるため、転職も有利になりますよ。
下記のような施工管理業務を行います。
- 浄化槽設備の設置工事の施工図の作成
- 浄化槽設備の設置工事の監督・指導
浄化槽設備士の詳細は、浄化槽設備士試験の難易度【合格率は30%くらい。過去問中心で勉強】にまとめています。
②浄化槽管理士
浄化槽の保守点検を行う国家資格です。
浄化槽の保守点検は、環境庁管轄で浄化槽管理士の独占業務です。
また、保守点検の中には補修工事もあり、浄化槽の施工図面の作成、施工管理なども行います。
公益財団法人日本環境整備教育センターが講習を実施しており、講習を受講した人の8~9割が合格しています。
浄化槽管理士の詳細は、浄化槽管理士の合格率からみる難易度【勉強方法も解説】にまとめています。
③浄化槽技術管理者
浄化槽技術管理者は、大規模な浄化槽の保守点検・調整・清掃の技術的な責任者の資格です。
「大規模な浄化槽」とは、下記に該当するもの。
- 処理対象人員501人以上(地方など)
- 処理対象人員201人以上(都市部など)
該当する浄化槽では浄化槽技術管理者を配置しないといけないため、独占業務の資格です。
浄化槽技術管理者の詳細は、浄化槽技術管理者の合格率は高め【きちんと講習を受けて修了考査で合格しよう】にまとめています。
④管工事施工管理技士
下水道や浄化槽の配管工事などの施工管理を行う国家資格です。
1級と2級があり、違いは下記のとおり。
- 1級:監理技術者になれる。特定建設業(下請に出す工事の総額が4000万円以上、建築一式工事の総額が6000万円以上の工事)と一般建設業を担当できる。経営事項審査の点数5点
- 2級:主任技術者になれる。一般建設業(特定建設業の工事規模未満の工事)のみ担当できる。経営事項審査の点数2点
簡単にいうと、1級は大規模な管工事の施工管理を担当できます。
公共工事を請け負う際の評価になる「経営事項審査」も加点されるため、管工事施工管理技士を取得すると年収アップしたり、転職が有利になります。
管工事施工管理技士の詳細は、下記の記事にまとめています。
⑤排水設備工事責任技術者
排水設備工事責任技術者は、下水道に必要な排水設備工事の計画・施工・保守を行う資格です。
都道府県や市町村の条例で指定された下水道排水設備指定工事店でないと、下水に関する排水設備工事を取り扱えません。
下水道排水設備指定工事店には、1名以上の排水設備工事責任技術者が必要なので、とても重宝される資格です。
転職が有利になるだけでなく、独立にも有利な資格です。
排水設備工事責任技術者の詳細は、排水設備工事責任技術者の難易度を合格率から分析【勉強方法も解説】にまとめています。
まとめ【浄化槽と下水道の違いやメリット・デメリットを知ろう】
浄化槽と下水道の違いやメリット・デメリットを知った上で、どちらを採用するか検討してみてください。
建物の場所や都道府県・市町村によっても、最適解が変わると思います。
また、浄化槽と下水道に関する資格は下記の5つです。
- 浄化槽設備士
- 浄化槽管理士
- 浄化槽技術管理者
- 管工事施工管理技士
- 排水設備工事責任技術者
詳しくは下記の記事にまとめたので、参考にどうぞ。
あなたの参考になればうれしいです!