電気の引き込み方法4選や工事の際の注意点を解説します。
建物の規模や用途によって、電気の引き込み方法が変わります。
引き込み方法の基礎を勉強しておきましょう!
この記事では下記がわかります。
- 電気の引き込み方法4選
- 電線から直接電気を引き込む方法の工事の注意点
- 引き込み柱から地中に電線を通して電気を引き込む方法
- 電気を引き込む工事の流れ
- 工事費用の目安
あなたの電気設備の勉強の参考になればうれしいです。
それでは、さっそく見ていきましょう!
目次
電気の引き込み方法4選
電気の引き込み方法は下記の4つです。
- 単相3線式
- 高圧引き込み
- 三相3線式
- 単相2線式
それそれの引き込み方法を解説していきます。
①単相3線式
戸建住宅・小規模アパート・中小規模の事務所・小規模店舗などに用いられる、電気の引き込み方法です。
電圧を100Vか200Vで選べます。
エアコンやIHクッキングヒーターなどは、200Vの電圧が必要なため、戸建住宅では単相3線式が一般的です。
また、OA機器も200Vでないと動かないものがあるため、中小規模の事務所も単相3線式が多いです。
戸建住宅、中小規模の事務所、小規模店舗の近くの電線は、3本が平行に張られています。
一番上と一番下が「電圧線」、真ん中が「中性線」です。
100Vで引き込む場合は、一番下の電圧線と、真ん中の中性線から引き込みます。
200Vで引き込む場合は、一番上と一番下の電圧線から引き込みます。
②高圧引き込み
ビル・集合住宅・商業施設・工場など大型の建物は、低圧電力では足りないので、6600V以上の高圧電力を引き込みます。
ただし、高圧電力を直接建物に電気を引き込まず、変電設備(キュービクルなど)などで電圧を調整して受電します。
変電設備は地上に設置することが多いため、高圧電線で地上の変電設備につなげると、人に当たる危険性があります。
電柱(引き込み柱)から地中に電線を通して、変電設備につなぐのが一般的です。
③三相3線式
三相3線式は、エレベーター・ポンプ・大型の空調機などがある建物に使われる電気の引き込み方法です。
※三相とは、3本1組の芯線の電線のことです。
戸建住宅ではなく、商業施設など業務用の建物に使われることがあります。
ただし、近年は業務用の建物でも単相3線式で大丈夫なことが多く、減っている引き込み方法です。
④単相2線式
単相2線式は、100Vの電圧を引き込む際に使われます。
100Vを超える電圧や、30A以下の契約の建物に使われます。
単相2線式は40年近く前から始まった引き込み方法ですが、現在は200Vまで使える単相3線式が主流のため、減ってきています。
電線から直接電気を引き込む方法の工事の注意点
戸建住宅・小規模アパート・中小規模の事務所・小規模店舗などの電気の引き込みは、電線を建物に直接つなげて電気を引き込む方法が主流です。
もっとも見慣れた引き込み方法ですね。
電線を建物に直接つなげて電気を引き込む方法は、工事の際にいくつかの注意点があります。
電気の引き込み線の長さ | 原則は40mまで。引き込み線が長すぎると風でゆれて危険なので。
引き込み線が長い場合は電柱を立てることを検討する。 引き込み線が長い場合は電力会社と協議が必要。 |
電気の引き込み線の高さ | 道路上は5m以上建物敷地内は2.5m以上 |
引き込み口が窓の近くの場合 | 窓から1.2m以上離す |
電気の引き込み線の種類 | 外側が黒い3芯CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁シースケーブル)など |
電力メーター設置の高さ | 下端が地上から1.8m以上、上端が2.2m以下 |
電力メーターから分電盤までの配線の長さ | 8m以下8mを超える場合は引き込み開閉器を設置する |
ちなみに、引き込み口の場所は施主と事前に打ち合わせしましょう。
施主の許可をとらずに勝手な場所に設置すると、クレームになることがあります。
また、電力メーターから分電盤までの配線は、建物内に隠して大丈夫です。
景観を考えて、建物内に隠したい施主もいます。
工事の手間を減らすためには、電力メーターから分電盤までの距離は短くしたいですよね。
工事費用も安くなるため、一石二鳥です。
ただし、分電盤の位置も施主と打ち合わせするのが無難です。
「分電盤は室内の景観を損なる」として、見えない部分に隠したがる人もいるからです。
あとでトラブルにならないように、事前に確認しましょう。
また、電力メーターの向きも施主に確認をとりましょう。
電力メーターを道路に向けておけば、検針員が敷地内に入らなくても使用電力を確認できます。
「敷地内に勝手に検針員が入ってくるのが嫌だ」という施主もいるので、電力メーターの向きも施主の意見を聞きましょう。
引き込み柱から地中に電線を通して電気を引き込む方法
建物の近くに電気の引き込み柱(電柱・ポール)を設置して電線をつなげて、引き込み柱から電線を地中を通して、建物に電気を引き込む方法があります。
パナソニックの「スッキリポール」などが有名です。
「建物に直接電線をつなぐのが嫌だ、景観を損ねる」という施主向けの方法です。
下記のようなメリットがありますが、施工費用は当然高くなります。
- 鳥がとまらない
- 検針員が敷地内に入ってこない
- 敷地内の庭木が育っても、引き込み線に当たることがない
※電力メーターは引き込み柱に設置します。
経年劣化したら取り替える必要もあるため、コスト高の方法ですね。
施主の中には引き込み柱から地中に電線を通す方法を知らず、提案すると「採用したい!」という人もいるので、事前に伝えて意見を聞きましょう。
電気の引き込み工事の流れ
電気工事の引き込み工事の、おおまかな流れは下記のとおりです。
- 施主へのヒアリングで要望を聞く
- 電力会社と引き込み方法の協議
- 建築設計
- 施主との打ち合わせ
- 電力会社に竣工届出を提出
- 電気の引き込み工事(引き込み線、分電盤、アンペアブレーカー、変電設備の設置など)
電力会社と引き込み方法の協議をするのが、ポイントですね。
施主の要望、場所、建物によっては、引き込み方法に制限が出ることもあるからです。
電力会社と施主への確認を行うのが、とても重要です。
電気の引き込み線工事の費用の目安
顧客から「電気の引き込み費用はいくら?」と聞かれることもあります。
引き込み工事の費用は、下記などによって変わるため、安易に答えないのが無難です。
- 建物の種類
- 場所
- 引き込み線の長さ
- アンペア数
おおよその目安は下記のとおりです。
- 戸建住宅など小規模な建物:10万~20万円
- 引き込み柱から地中に電線を通して、電気を引き込む方法:30万~40万円
- 単相2線式から単相3線式に変更する工事:5万~10万円
- 高圧引き込みの設置工事(引き込み柱、変電設備など):200万~300万円
まとめ
この記事をまとめます。
- 電気の引き込み方法は単相3線式、高圧引き込み、三相3線式、単相2線式の4種類がある
- 電線から直接電気を引き込む方法の工事には、いくつか注意点がある
- 引き込み柱から地中に電線を通して、電気を引き込む方法もある
- 電気の引き込み工事は、電力会社と施主との打ち合わせが大切
- 電気の引き込み工事の費用は、一概にいえない
電気設備の仕事をしている人には、基礎的な知識なので必ず覚えておきましょう。
あなたの勉強の参考になればうれしいです!
ちなみに、分電盤の設置基準については、分電盤の設置基準を解説【電気器と遠くなると電圧が低下する】にまとめているので、こちらも参考にしてみてください!