換気システムの4つの種類と効果

換気

換気システムの4つの種類と効果をご紹介します。

換気システムには、

  1. 第1種換気方式
  2. 第2種換気方式
  3. 第3種換気方式
  4. 自然換気

の4つがあります。

 

それぞれの換気方式の効果やメリット・デメリットを詳しく解説していきます。

換気や空調の勉強になればうれしいです。

SAN-SUKE

機械換気と自然換気の違い

換気ダクト

換気方法には大きく分けて、

  1. 機械換気
  2. 自然換気

の2種類があります。

 

①機械換気は換気扇を使って強制的に換気する方法です。

機械換気には、

  1. 第1種換気方式
  2. 第2種換気方式
  3. 第3種換気方式

の3つがあります。

 

②自然換気は旧日本建築をイメージするとわかりやすいです。

昔の家は障子やふすまを開け放つと通気性が良く、自然換気が使われていました。

湿気

ちなみに、もし換気をしないとどうなるのでしょうか?

  • 室内の二酸化炭素濃度が濃くなる
  • 湿気がたまる
  • 湿気によるカビの発生
  • 室内に入ってきた有害物質(ダイオキシン、PM2.5、花粉など)が外に出ていかない

となってしまいます。

それらを防ぐためにも建物に合った換気方法をとることが大切です。

まずは、機械換気の第1種換気方式・第2種換気方式・第3種換気方式について見ていきましょう。

 

第1種換気方式とは

リビング

第1種換気方式とは、給気と排気の両方を機械(換気扇)で換気する方法です。

給気も排気も機械で行うので確実に換気できます。

主に高気密高断熱住宅に用いられます。

また、給気だけ機械だと室内の空気の圧力が高い状態(正圧)になります。

排気だけ機械だと室内の空気の圧力が低い状態(負圧)になります。

 

第1種換気方式は給気も排気も機械なので、室内の空気の圧力が安定します。

第1種換気方式では「熱交換型換気システム(ダクト方式)」が使えます。

例えば夏の暑い日で外気温が35℃、エアコンで室内気温を25℃に設定したとしましょう。

外気をそのまま給気すると、室内に35℃の熱風が入ってきて空調効率が下がってしまいます。

 

熱交換型換気システムを使えば、室内と温度差がある外気を給気するときに、室内の温度と近い温度に変換して給気できます。

室内の空調環境が崩れるのは換気の影響も大きいため、熱交換型換気システムは空調効率を保つのにもっとも有効です。

火と水

熱交換式の換気扇に熱交換素子という部材を使うと、室内気温と近い温度の外気を取り入れてくれます。

例えば、熱交換素子の熱交換効率が80%で、外気温35℃、室内気温25℃だとすると、室外と室内の気温差は10℃です。

10℃の80%、つまり外気温を8℃下げて27℃で給気してくれます。

 

第1種換気方式は機械換気の中で一番性能が良いですが、デメリットが、

  1. 設置コストが高い
  2. メンテナンスコストが高い

の2点です。

第2種換気方式は給気のみ、第3種換気方式は排気のみを機械で行いますが、第1種換気方式は給気も換気も機械なので単純にコストは2倍です。

 

また、天井裏などにダクト(空気の通り道)を通して各部屋に給気するため、さらにコストがかかります。

咳

ダクト内は汚れた外気を強制的に給気することでホコリや汚れがたまりやすく、定期的な清掃が必要なのもちょっと面倒なところです。

ダクト内にカビが生えたり虫が入り込むことがあるので、清掃を怠ると室内にカビ菌や虫が入り込むことがあります。

当然、清掃にもコストがかかるので設置コストだけでなくランニングコストもかかります。

建物の構造によっては第1種換気方式ではなく第3種換気方式でも大丈夫なことがあるので、事前に熱損失係数を計算しましょう。

 

第2種換気方式とは

クリーンルーム

第2種換気方式とは、給気を機械で行い、排気は自然排気する換気方法です。

給気を機械で強制的に行うことで、室内の圧力(正圧)で自然に排気されていくイメージです。

 

第2種換気方式は住宅には不向きです。

  • 給気が機械、排気は自然なのでどうしても給気が強く、汚れた外気を取り込むと室内の空気が悪くなる
  • 外気の湿気や気温を強制的に給気するのに対して排気が弱いので、空調効率が落ちる
  • 室内の気圧が高いので、壁内に室内の湿気が入ってしまい結露・劣化の原因になる

などの理由で住宅には向かないのです。

 

第2種換気方式はドアを開けても外気が入り込んでこないので、クリーンルームなどに向いています。

第2種換気方式には「デマンドコントロール型」というものがあり、給気量を自動制御してくれるものがあります。

給気量が自動制御できて外気の影響を受けにくく、ランニングコストを下げられます。

 

ただし、第2種換気方式もダクトが必要なため設置コストは高めです。

また、第1種換気方式と同じく給気ダクトの清掃をしないとホコリ・虫・カビの原因になります。

 

第3種換気方式とは

開いてる給気口

第3種換気方式は給気は自然吸気、排気は機械で強制的に行う換気方法です。

戸建住宅や集合住宅で多く用いられています。

給気よりも排気が強いため、気圧が低い負圧の状態になります。

第2種換気方式と違い、外気の暑い・寒い空気がどんどん入ってくるわけではないので、空調効率は良いです。

 

事実、第3種換気方式は寒冷地でも使われています。

※ただし、換気の環境が悪いと室内の空気が外に出ていきすぎてしまい、空調効率が落ちます。

各部屋には給気口(壁に通気口を作るタイプ)を設置し、排気口(換気扇)はトイレや風呂などに設置します。

換気扇

室内のドアを閉めても換気できるように、ドアの下にわずかな隙間を作って、トイレや風呂の換気扇から排気します。

ドアを閉めても換気できるため、室内気温を保ちやすいです。

排気のダクトスペースは必要ですが、空気が出ていく道なので、第1種換気方式・第2種換気方式ほどのメンテナンスは必要ありません。

常に強制排気しているので、第2種換気方式のように壁内に湿気が入り込むこともありません。

 

第3種換気方式には「ダクトレスタイプ」というものもあります。

排気口(換気扇)をトイレや風呂ではなく、各部屋に設置する手法です。

ダクトスペースがいらないので設置コストが安いですが、居室に換気扇があるので音がうるさいことがあります。

居室に換気扇を設置する関係上、音がうるさくないよう回転が弱い換気扇になりがちで、外が強風だと外気が入ってくる可能性があります。

換気扇

また、戸建て住宅の場合は第3種換気方式だと天井裏から給気されることがあります。

天井裏の環境が悪いと臭いが室内に入ってくることになるため、天井裏にも排気の換気扇を設置することをおすすめします。

第1種換気方式よりも設置コスト・ランニングコストともに安いため、人気の換気方法です。

ただし、気密性が低い建物だと計画換気しにくいです。

換気方式を決定する前に熱損失係数を計算しましょう。

 

自然換気(パッシブ換気)とは

民家

自然換気は給気も排気も機械(換気扇)を使わないで、自然に換気する方法です。

「窓を開ける」なども自然換気に該当しますが、室内に温度差を作ることで空気を移動させて換気するという方法でもあります。

例えば、床下を温めることで温かい空気が天井まで上昇して煙突から排気されるといった感じです。

旧日本家屋に軒下があるのは、床下に風を送り込むことで室内を冷やす効果があるためです。

また、旧日本家屋は壁が薄くて隙間も多いため自然と換気できます。

 

ただし、2003年の改正建築基準法に基づくシックハウス対策で、新しい建物には24時間換気システムが義務化されたため、気密性の高い新しい建物で自然換気を導入することは難しいです。

いちいち窓を開けて換気しなければいけないので、空調効率も落ちます。

メリットはメンテナンスが一切いらないことですが、外気と室内の気温差が少ない春や秋は空気が動きにくく換気が弱くなるデメリットがあります。

現在はあまり使われない換気方法です。

 

24時間換気は義務化されている

24時間換気スイッチ

気密性の高い住宅が増えたことと、建材の化学物質による「シックハウス症候群」が社会問題になったため、2003年7月以降のすべての新築の建築物は24時間換気システムを設置することがシックハウス法・改正建築基準法で義務化されました。

 

シックハウス症候群の原因は、

  • 建材に使われるトルエン・ホルムアルデヒドなどの揮発性のある化学物質
  • 高気密住宅で湿気が多くなりカビやダニの発生
  • 高気密住宅内のキッチンやストーブによる二酸化炭素の増加(酸素濃度の低下)、一酸化炭素の発生
  • 日用品に使われる化学物質が高気密住宅内から出ていないことによる化学物質の吸引

などです。

 

室内に悪い空気が滞留しないために24時間換気をする必要があります。

24時間換気は室内の空気を1時間で半分以上入れ替えることが求められます。

ちなみに、24時間換気については『24時間換気システムの必要性や種類によるメリットとデメリット』を参考にどうぞ。

24時間換気システムの必要性や種類によるメリットとデメリット

24時間換気してたら空気清浄機は無意味?

空気清浄機

24時間換気をしたら、常に外気が室内に入ってきて、室内の空気が出ていくことになります。

「室内に空気清浄機を置いているが、せっかくきれいにした空気がどんどん外に出ていくなら空気清浄機は無意味?」と思いませんか?

 

答えは「空気清浄機は有効」です。

換気と空気清浄機は目的が違うからです。

換気の目的は、

  • 室内に酸素を取り込む
  • 湿気を防ぐ
  • 湿気によるカビの発生の防止
  • 室内に入ってきた有害物質(ダイオキシン、PM2.5、花粉など)を外に出す

などです。

 

一方、空気清浄機の目的は「室内のホコリ・花粉・チリ・アレルゲンなどを除去すること」です。

わかりやすくいうと、

  • 換気:空気を動かすこと
  • 空気清浄機:空気をきれいにすること

なので、まったく目的が違いますよね。

 

もし空気清浄機がなかったら、室内に取り込まれた汚れた外気をきれいにすることができません。

給気した空気はしばらく室内に留まるので、室内にとどまっている間の空気をきれいにしてくれるのが空気清浄機です。

「室内の空気がきれいで、常に動いている」のがもっとも理想的な状態なので、24時間換気と空気清浄機は合わせて使うのが良いのです。

 

まとめ

扇風機

換気システムには、第1種~第3種換気方式と自然換気の4種類があります。

4種類の大きな違いは、

  • 第1種換気方式は給気・排気ともに換気扇で換気
  • 第2種換気方式は給気のみ換気扇
  • 第3種換気方式は排気のみ換気扇
  • 自然換気は換気扇なし

ということです。

それぞれ効果が違うため、建物に合った換気方式を取り入れましょう。

 

24時間換気が義務化されたため、現在はほとんどが機械換気です。

機械換気の違いは押さえておきましょう。

あなたの空調の勉強の参考になればうれしいです。

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